高級アルコール系、アルファオレフィン系界面活性剤
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高級アルコール系、アルファオレフィン系界面活性剤
宣伝費や容器、パッケージに莫大な費用を要する市販のシャンプーは、低コストで大量生産する必要があるため、必然的に安価でも洗浄力がある高級アルコール系やアルファオレフィン系の界面活性剤が洗浄成分の主流になりました。
高級アルコール系の洗浄成分はラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸アンモニウムなどですが、泡立ちやすく、洗浄力が非常に強いのが特徴です。
詳しくは後述しますが、ラウリル硫酸ナトリウム(化学名・高級アルコール硫酸エステルナトリウム。アルキル・サルフェート・ASともいう)は、生化学分野ではSDS(Sodium Dodecyl Sulfate)と呼ばれ、古くからタンパク質の変性剤として用いられています。
SDSは0.01%以上の濃度で蛋白変成作用を持ちます。
ラウレス硫酸ナトリウムは、ラウリル硫酸ナトリウムの洗浄力、脱脂力が強すぎるため、分子を大きくして、頭皮や髪への刺激を抑えた界面活性剤がですが、ラウリルとラウレスの洗浄力や脱脂力が非常に強いことには変わりありません。
アルファオレフィン系のオレフィン(C14-16)スルホン酸ナトリウムは、近年、皮膚刺激の強い高級アルコール系の代替成分として利用頻度が増えています。 コストが安いうえ、植物油脂から作ることができるため、「自然派」「植物由来」「天然」などを宣伝文句にしたシャンプーによく使われています。
高級アルコール系、アルファオレフィン系界面活性剤は、原料代が非常に安価にもかかわらず、洗浄力が高いため、シャンプーやボディソープ、歯磨きなどに多用されている界面活性剤ですが、消費者の安全よりコストを重視している、と指摘せざるを得ません。
繰り返しになりますが、油脂(弱酸)と木灰(強塩基)の中和反応で弱塩基(水溶液が弱アルカリ性)になるため、石けんの特徴は、加水分解して、水溶液は弱アルカリ性であることです。
この特徴のため、洗浄に働いた石けん成分は汚れの酸性成分で中和され、残った石けん成分は水で加水分解され洗浄力を失います。
合成洗剤は加水分解せず、洗浄力が持続する
高級アルコール系界面活性剤は、石けんの特徴を「弱点」として、油脂(弱酸)の部分をスルホン酸(硫酸)ナトリウムなどの強酸に置き換えることで、
強酸と強塩基の中和反応で中性になります。
そのため、強い酸を加えても洗浄力は変わらず、水中の硬度成分と結合することが少ないため、石けんカスのような金属石けんができにくく洗浄力が落ちないのです。
また、合成界面活性剤は、加水分解しないので、水で薄まっても洗浄力が持続します。
したがって、合成洗剤で洗った後、石けんのようにスキッとせず、いつまでもヌルヌルしていることで分かるように、石けんがすぐに洗浄力(脱脂力)を失うのに対し、合成洗剤の洗浄力は脱脂力と比例し、脱脂力は皮膚への吸着残留と比例し、完全に洗い流すことができないため、常時ある程度皮膚や髪に残留しています。
シャンプー残留テストで、シャワー温水量3~4リットルで合成洗剤の残留率は20~40%と報告されています。
シャンプー残留テスト
シャンプーの主成分である界面活性剤が、ゆすぎ水の中にどの程度残留するかを、メチレンブルー法によって調べるテスト。
小林勇氏(元生活共同組合連合会ユーコープ事業連合会商品検査センター所長)による残留テスト。
また洗浄力が強すぎる合成界面活性剤をシャンプーに使用すると、必要な油分まで取ってしまい髪がきしんで指通りが非常に悪くなります。
そのため、使用感をよくするためにシリコーンオイルやカチオンポリマーなどのコーティング剤の配合が不可欠なのです。
シリコーンオイル
一般的には「シリコン」と呼ばれるが、「シリコーン」が正式名称。
シリコンは、自然界に存在する元素であるケイ素で、シリコーンはシリコンをもとに作られた人工的な化合物。
シリコーンは、形状はオイル、ゴム、パウダーなどと極めて多様で、用途も多岐にわたり、いろいろな分野で 利用されている。
シリコーンオイルは髪をコーティングして、手触りをよくしたり、キューティクルを保護する目的で配合される。
シリコーンは髪をコーティングし、摩擦による髪のダメージを防ぐことや、指どおりを滑らかにするために配合されるが、髪に蓄積して炎症を起こすなどのトラブル(ビルドアップ)もあり、ノンシリコーン(シリコーンを配合しない)を謳う商品がブームになった。
カチオンポリマー
カチオン系ポリマーは毛髪表面に被膜をつくって保護(コーティング)をする成分のことで、リンス、コンディショナー、トリートメント剤に含まれる。
カチオン化とは、物質に陽イオン(カチオン)の性質を持たせる化学反応をいう。
カチオン化されると髪への吸着力がアップし、頭皮へも吸着しやすくなり、それが頭皮のべたつきの原因になったり、皮膚刺激になったりする。
ポリマーとは小さな分子が繰り返し結合して大きくなった化合物のことで天然のものと合成のものに大別され、合成ポリマーは化学合成して作られる合成樹脂・合成ゴム・合成セルロースの総称で、変質や腐敗がない原料として化粧品にも頻繁に用いられる。
コンディショナーやトリートメントの場合、高級アルコール系界面活性剤は陰イオン(アニオン)界面活性剤で、髪はマイナスに帯電しているから、プラスに帯電している陽イオン(カチオン)はイオン結合によって毛髪や皮膚に吸着しやすくなる。
リンス(コンディショナー)は陽イオン(カチオン)活性剤
リンス「rinse」は英語で「すすぎ」という意味ですが、初期のシャンプーは石けんでしたから、アルカリ性に傾いた髪の状態を速やかに弱酸性に戻したり、開いたキューティクルを速やかに閉じるために、レモン汁や酢などの弱酸性溶液で中和したのがリンスの始まりです。
ところが「リンス」は和製英語で、海外では通用しません。
海外では「ヘアコンディショナー」です。
強い洗浄力を持つシャンプーで洗った後、髪はリンス(コンディショナー)で髪の表面をなめらかに、すべりをよくしなければきしんで、ごわごわになります。
シャンプーの主成分である高級アルコール系界面活性剤は、陰イオン(アニオン)界面活性剤で、マイナスに帯電していますから、プラスに帯電している陽イオン(カチオン)界面活性剤で中和するのが市販のリンス(コンディショナー)の役割です。
これらの代表的な物質としては、塩化ベンザルコニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウムや塩化ジアルキルジメチルアンモニウムなどが知られています。
陽イオン界面活性剤は、たんぱく質を固まらせる作用が強いうえ吸着性・残留性が強いので、その分、皮膚に対する影響が非常に大きいのです。
髪の長い人が、背中や首周りなどリンス・コンディショナーが直接付着する部分に、肌荒れやニキビなどのトラブルが発生している場合は陽イオン(カチオン)界面活性剤が吸着してたんぱく変性を起こしていることが考えられます。
髪は死んだ細胞だから毒性は問題ない、とでも考えているのでしょうか?
コンディショナーやトリートメントなどのリンス剤の多くに毒性の強い陽イオン界面活性剤が使われていますから、頭皮にはつけないように注意しなければなりません。
陽イオン界面活性剤はリンス(コンディショナー)以外にも衣料用の柔軟仕上げ剤、殺菌剤や帯電防止剤などに幅広く使用されています。
静電気は、主に乾燥が原因ですから、毒性のある物質を使わなくても。水やグリセリンを混ぜた水のスプレーなどで湿らせれば対処できます。
柔軟剤の問題は衣類全体が主成分の陽イオン界面活性剤にコーティングされるため、洗濯後の衣類を着ている間、もともと「殺菌」や「除菌」を目的に使われる成分がずっと皮膚に接触し続けることです。
また最近は、強い香りが長期間持続する「高残香性柔軟剤」が主流になり、アレルギー作用を起こすことのある石油系の香料が使われていることによって、香りつき商品で体調不良になり、重症になる「香害」も大きな社会問題になっています。
蛋白質変成作用
高級アルコール系界面活性剤や陽イオン界面活性剤は、細胞やタンパク質を可溶化する界面活性剤として頻用されています。
界面活性剤のうちSDS (Sodium Dodecyl Sulfate) のようなアニオン性界面活性剤やCTAB (Cetyl Trimethyl Ammonium Bromide) のようなカチオン性界面活性剤は変性作用をもち、タンパク質・タンパク質間の相互作用を破壊してタンパク質を変性させます。
※SDS (Sodium Dodecyl Sulfate)はシャンプーや歯磨き粉の洗浄成分であるラウリル硫酸ナトリウムの別名です。
高級アルコール系、アルファオレフィン系界面活性剤は、髪のキューティクルを作っているタンパク質を溶かす作用があるため、髪が細くなり、枝毛、切れ毛を起こしやすくなるのです。
さらに、頭皮の皮脂を必要以上に取りすぎ、頭皮のバリアを壊してしまうので、頭皮がだんだん荒れて弱くなり、フケやかゆみ、抜け毛などさまざまなトラブルにも繋がりやすくなります。
高級アルコール系、アルファオレフィン系界面活性剤および陽イオン(カチオン)界面活性剤は、身体の洗浄剤としては欠陥品であることは明らかです。
髪の長い人以外リンス(コンディショナー)は要らない
洗剤、化粧品メーカーの巧妙な販売戦略によって、いつの間にかシャンプーとコンディショナーはセットになって、コンディショナーを使うことが当たり前になっています。
しかし、実際にはコンディショナーは、髪が長い人や髪を染めたりパーマをしている人以外には必要はないはずです。
DIMSDRVIVE「シャンプー・リンスに関するアンケート」によれば、男性の半分はリンスをしていません。
また、石けんシャンプーの場合は男女を問わず大半の人はリンスをしません。
環境や健康のことを少しでも考えるなら、肌にも環境にも毒物であるリンス剤の使用は考え直すべきでしょう。
横浜市環境創造局下水道施設部下水道水質課の陽イオン界面活性剤に関する見解は以下の通りです。
リンスには、家庭用洗剤として使用されることの多い陰イオン系や非イオン系とは違う種類である陽イオン界面活性剤が主に使用されています。
一般的に、陽イオン界面活性剤は毛髪に吸着されやすく、毛髪をしなやかに柔らかくし帯電を防止する働きがあります。
また、同様の理由で衣料用の柔軟仕上げ剤などにも幅広く使用されています。
これらの代表的な物質としては、第四級アンモニウム塩であるアルキルトリメチルアンモニウム塩やジアルキルジメチルアンモニウム塩などが知られています。
―中略―
しかし、陽イオン界面活性剤には殺菌性があるため、分解をする微生物にもこれらの物質に対して馴致(化学物質に対して微生物が馴れることで摂取や分解が可能になること)が必要であることから、多量に使用することは環境に影響を与える懸念があると考えられます。
また、下水処理工程での挙動についても調査事例が少なく、その解明は今後の研究課題であると考えています。
テレビコマーシャルと合成シャンプー
合成洗剤を使う人が多いのは、圧倒的な宣伝力と便利さによるものです。
合成シャンプーが発売された時期と重なりますが、テレビが普及し始めた1650年代の半ば、評論家の大宅壮一氏は、「一億総白痴化」という言葉で、テレビが人間の思考力や想像力を低下させる、と警鐘を鳴らしました。
商品の認知率を一気に高めることができるテレビコマーシャルによって、合成シャンプーは、広告収入で成立している現在のメディアの経営形態に乗じて購買行動に圧倒的な優位さを持っています。
また、ネット広告は、テレビコマーシャルに匹敵するほど成長を続けていますが、大手広告主が従来のメディアからインターネットへとシフトさせつつあります。
ネット広告の成長に比例して生活者を欺くような広告も増えており、それは特に基礎化粧品やコンプレックス系の化粧品(シミケア商品、スカルプシャンプーなど)の宣伝に顕著にみられます。
アフィリエイトなど成功報酬型広告は、あたかも記事のように見せかけて消費者に宣伝とは気づかせず、不正確な表現などお構いなしで購買を煽るなど、その手口は益々巧妙になっています。
そして、大宅壮一氏の指摘通り、消費者の思考力の低下も相まって、シャンプーの本来の役割が大きく歪んでいます。
すなわち、シャンプーの目的が髪や頭皮をきれいに洗う、というシンプルな作業から、コンディショナーやトリートメントを塗りたくるケアに変わってしまい、人間が本来持っている頭皮や髪をきれいにする自浄作用が阻害されています。
また、世界でも日本人だけの「毎日シャンプー」もテレビコマーシャルの影響によるものですが、必要以上のシャンプーは、頭皮に必要な油分が洗い流されてしまい、抜け毛や薄毛などの髪のトラブルの原因を作り出しています。
「便利さ」は人間に本来備わっている感覚や動作を衰えさせるという側面もあり、実際に雑巾やタオルを絞れない、靴のひもを結べない子どもが増えるなど、現代人の身体を操作する能力の低下が問題になってきています。
若い世代ほど急須でお茶を飲む機会が無くなっていると言われていますが、市販の飲料の「コンビニエンス(便利)」によって、お茶の歴史や文化が失われていくのです。
地球温暖化の影響が深刻になっている今日、洗剤は何時でも手に入る、洗濯は洗濯機がするもの、と思っているとすれば能天気すぎるでしょう。
純石けん分のみでできているシンプルな石けんは、一つあれば、顔、身体、髪、髭剃り、食器、鍋、衣類、履物など何にでも使えます。
その石けんの汎用性は、有事の備えにもなり、また、石けんを上手に使いこなすことは、生きる力に繋がります。
"高級"アルコールとは
高級アルコールの「高級」というのは「高品質」という意味ではなく、「炭素数の多い(通常6以上)アルコール」という意味です。