やってはいけない10ヶ条
第1条
無添加石けんで洗濯をする
へんな謳い文句がまかり通っていますが……
無添加にこだわった洗濯用石けん。
赤ちゃんや肌の敏感な方の衣類にもお使いいただけます。
なにが「へん」なのか、説明します。
重質洗剤
洗濯に使われる洗剤には重質洗剤と軽質洗剤があります。
重質洗剤は、洗浄力を強くするため水溶液は弱アルカリ性を示します。通常、洗濯機の標準コースで洗います。
木綿、麻、レーヨン、ビニロンおよびナイロンなど弱アルカリ性に耐える繊維を用いた製品で、これらに油汚れや垢汚れなど除去しにくい汚れが多く付着したものを洗浄するために炭酸塩などの助剤(ビルダー)が配合されています。
※ 助剤(ビルダー)とは、洗浄力増強剤のこと。
助剤は、水中や汚れに存在し、洗浄の邪魔をするカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどを封鎖する水軟化作用、衣類等に付着する汚れを落としやすいアルカリ性に保つアルカリ緩衝作用、落ちた汚れを洗浄液中に分散し再付着を防ぐ分散作用などの働きによって洗浄力を高め、さらに界面活性剤の配合割合を少なくさせることができます。
洗濯用の石けんの助剤としては、炭酸塩やケイ酸塩が配合されていますが、
天然植物油脂を主原料とし、
炭酸塩、香料、防腐剤等一切添加物は不使用。
などと、炭酸塩を香料や防腐剤などの添加物と同列にし、否定的に扱うのは洗浄の科学が全く理解できていないばかりか、儲け本位の醜いメーカーの体質を表しています。
無添加の洗濯用石けんの洗浄力の低さは、以下の引用文を見れば明らかです。
アルカリ剤が配合されていない無添加の石けんであるため,極めて低い洗浄率を示したものと思われる
石けんの助剤として配合される炭酸塩、ケイ酸塩は無機物で生分解不要のため、環境への負荷がほとんどありません。
軽質洗剤
軽質洗剤は、水溶液は中性。おしゃれ着など汚れの程度が軽いウールや絹を手洗いや洗濯機のドライコースで洗う時に使います。
どういうワケか、お値段が高いものが多い。
軽質洗剤はおしゃれ着用洗剤とも言い、繊維が傷みにくいように作られた、洗浄力が弱い洗剤のこと。
衣類に優しい = 肌に優しい、とはなりません。
衣類というものは、清潔であってはじめて肌に優しいのです。
いくら成分が安全だ、無添加だ、といっても汚れがきちんと落ちなければ、不潔であり、肌に優しいどころか健康に被害をもたらすことになる。
乳幼児期の赤ちゃんは消化器官が未発達なため、しょっちゅう吐き戻しをします。 赤ちゃんが吐き戻したよだれかけや肌着の汚れは簡単には落ちません。 胃液が強い酸(pH1.5~2)だから。
弱アルカリ性の洗剤でも手強い汚れが、酸に弱い無添加の石けんや中性洗剤では歯が立たないのです。
だから、赤ちゃんの肌着やベビー服のほとんどが弱アルカリ性の洗剤で洗濯しても縮んだりよれたりしにくい丈夫な綿なのです。
弱アルカリ性の洗濯用洗剤(重質洗剤)でしっかり汚れを落とし、十分にゆすいだ衣類が肌に優しいのです。
無添加洗濯用石けんの売り文句は、重質洗剤による洗濯は衣類にアルカリが残るから肌によくない、との印象を持たせようとしているようですが、きちんと洗えばアルカリは残らないし、多少残ってもクエン酸や酢をごく少量、すすぎの最後に入れればアルカリは中和されます。
むしろ無添加の石けんを使った方が、汚れやシミがきれいに取り除けないだけでなく石けんカスも衣類に残ります。
だから黄ばんで臭くなるし、洗濯槽はカビだらけになります。
無添加にこだわってはいけない
絹やウール洗いに、赤ちゃんの肌着や肌の弱い方のお洗濯にお使い下さい。
この謳い文句に対しては、藤井徹也著「洗う その文化と石けん・洗剤」(幸書房)から以下を紹介します。
Q5 羊毛や絹ものに弱アルカリ性洗剤はよくないと言いますが
A5 いけないことはありません。むしろ弱アルカリ性の方が汚れが取れます。
大切なことは洗い方なのです。羊毛や絹ものは手荒な取り扱いをすれば中性洗剤でも傷みます。要は、たっぷりした洗剤液の中でやわらかく押し洗いをするか、つかみ洗いをすることで、温度は、洗いもすすぎも30~35度のぬるま湯を使って下さい。
綺麗に洗濯をするためには、無添加にこだわってはいけません。
「無添加=優しい」のイメージを悪用した無添加商法にご用心